指の先から破壊光線

月曜の朝までに考えておくこと

クローゼットに詰め込んでいるもの

畳敷きの部屋の押し入れしか知らない本の虫(幼虫)にとって、クローゼットというのは現実じゃない場所に繋がっているものでした。

 

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もし、私と似たような本の虫(幼虫)だった頃がある人がいたら、思い出してみてください。自分と同じ年頃の子どもが、ここではないどこかに冒険に出るとき、普段は開けない扉や、開けられない扉、開けてはいけない扉から出発しませんでしたか。ダイアゴン横丁も、真夜中の庭も、ナルニア国も、誰かが、あるいは自分が、現実にある何かを開けることで現れることを、幼虫はあらゆる冒険を通じて知りました。

 

でも幼虫の住む家に、開かない扉はありませんでした。学校にも見当たりませんでした。ストーブのすすを捨てるための小さな扉は、開けたら死んだ雀が出てきたのでクラスのみんなで土に埋めました。近所の商店街はたくさんのシャッターが降りたままになっていましたが、そんな素敵じゃないところに入口があるとは思えませんでした。

 

夢見がちな幼虫は、素敵なおうちの、素敵なクローゼットならあるいは、と考えました。よそゆきのワンピースと長いコートとかわいい靴が整然と並んでいるようなクローゼットの奥にしか、雪のしんしんと降る知らない国はないのでしょう。ふすまを外した押し入れに、小さなたんすを入れて、きょうだい三人分の服を詰め込んでいるようじゃだめなのです。幼虫は、いつか素敵なクローゼットのある素敵なおうちに住むことに思いをはせながら、他の子どもの冒険を読み続けました。

 

かつての幼虫は今や成虫となりましたが、クローゼットにはいまだに夢を見ています。当面の夢は、アイロンをかけた襟付きシャツと綺麗な色のセーターをクローゼットに掛けておきたいということです。

 

急に寒くなった今年の秋、衣替えはまだ終わっていません。